穂織の秘密を多角的に解き明かすAVG。『千恋*万花』をクリアして感じた詳細な感想。

概要

サノバウィッチRIDDLE JOKERをクリアし、次に手に取ったゆずソフトがこのタイトルでした。理由としては主に3つ。

  • もともと有名なタイトルであり、いつかはクリアしてみたいと思っていた
  • 和風テイストな内容に興味を惹かれた
  • Switch版のVtuber実況動画が挙がっていたので、それを「ゲームクリア後に」観たかった

ゲーム開始は2022/5/31、ゲーム完走は2022/7/5でした。

シナリオの出来の良さが『サノバウィッチ』以来

これは一般論ですが、ヒロインなど、キャラの扱い方が下手なシナリオだと、ルート全体の印象が悪くなります (『カミカゼ☆エクスプローラー!』で一度あった) 。その点、ゆずソフトのゲームは、「キャラの可愛さ」「シナリオが重くなりすぎないこと」が安定しているため、ストレスを溜めずに読み進められました。

しかし、シナリオ自体の面白さに差があると、例えば「あやせルートと茉優ルートだけ走ればいい」などといった、アンバランスな感想が生まれてしまいます。せっかく複数のルートがあるのですから、それぞれの持ち味が生かせるものであるべきだと、個人的には感じます。

そこへ行くと『千恋*万花』は、どのルートにも意味を持たせていて優秀でした。

  • 朝武家の過去が明かされる芳乃ルート
  • 常陸家の過去が明かされる茉子ルート、
  • ムラサメちゃんの過去が明かされるムラサメルート
  • 穂織の地で起きたゴタゴタが明かされるレナ ルート
  • 朝武家以外でも生活する意義を見いだすサブヒロインルート

それぞれの視点から物語が解き明かされることで、より多角的に「穂織」について知ることができます。例えば私の場合、「4番目のヒロインだしおまけ要素が強いかな」とレナルートから始めたところ、いきなり穂織の秘密が明かされる展開に驚愕したものでした。が、逆にそれによって、他のルートの展開を読み解きやすくなりました。

こうしたバランスの良さも『サノバウィッチ』譲りで、非常に良いゲームだと私は感じます。

各√の詳しい感想

レナ・リヒテナウアー

ヒロインとの出会い方がラブコメ感強かったですし、当人が朗らかなこともあって、ゆるーい展開になると思ってたのですよ。

でもそうじゃなかった。いや、それだけじゃなかった。

レナが憑代の影響を強く受けたことにより、彼女はたびたび夢の中で、穂織……そして土地神に起きた出来事を追想していきます。シナリオを読むプレイヤーとしては興味深い内容ばかりですが、それを間近で感じる彼女としては、感情を動かされ、不安と興奮が入り交じったかのような気持ちになったことでしょう。その情報を主人公(将臣)らと共有しながら過去を探っていき、そして遂に「呪い」の原因を突き止める……といった、読ませる展開になっています。

もちろんその間には、外国人留学生であることから来る海外ネタや友達付き合い、そしてもちろんラブコメ展開についても語られます。性格は朗らかながらガードは堅かったところ、将臣のお世話になっていくにつれて、徐々に惹かれていく描写がたまりません。特に、

ここの (愛の告白という文化について)「こんなに嬉しくて、幸せな儀式なら、きっとみんなみんな、たくさんハッピーになれるはずですから!」と、

ここの (レナが穂織のゴタゴタに巻き込まれたことについて)「2人のことなのに、マサオミにだけ責任があるみたいに思ってるのが、凄く変! とても変ですよっ」が最高に良かったです。また、この後にある、

「ビデオチャットツールを使って遠く離れた家族と同じ星を見る」という描写が凄い……その発想はマジで凄い……。

この他にも、良い意味で予想を裏切る展開が頻発します。シナリオの筆が乗ったのでしょう。前述したように、他のルートも素晴らしい出来でしたが、初見殺しのインパクトは、このレナのルートが随一でした。


なお、一番笑ったのは、シナリオ中のエピソードの影響か、レナのことを将臣が「女神」とか「天使」とか呼びだしたことでしょうか。なんというバカップル。

鞍馬小春、馬庭芦花

飲食店で提供するお菓子開発を主題に、幼馴染な2人との仲が狭まっていく展開。サブヒロイン√らしく分量はアッサリしていますが、ヒロイン達の魅力はよく出ていたと思います。芳乃に関する問題が一段落し、志那都荘に移住し、田心屋に通い詰める展開になるため、他のヒロインがほとんど出てこない……というのはじわじわ来る。

なまじお互い仲が良いため、互いに互いを推していく……といった筋書きは、別メーカーになりますが『大図書館の羊飼い』の鈴木佳奈ルート・御園千莉ルートを彷彿とさせます。

ムラサメ

純愛ゲーにおける異種婚姻譚は、人間ではない異種の側が人間に「成る」展開が多く、本作もそれに違いません。ムラサメは元人間ですが、叢雨丸に宿る管理者として、ごく一部の人間にしか見えない魂のような存在なため、「最悪、転生でもして復活するんだろうな」とは思っていました。『千恋*万花』はエロゲーなので、何らかのギミックでエッチする描写は必要ですし……。

ただ、まさか肉体が御神体(全裸)として封印されていたというストレートな展開だとは思わなかったよ。叢雨丸の人柱として提供されていたそうですが、地面に埋まっていたとか灰になっていたとかじゃなくてよかった。

また、生前は病弱だったとのことですが、がんとか結核とか言われなくてよかった……肺炎で済んだ……。他のルートでも触れますが、この辺り、ヒロインの扱いに手心があるのはゆずソフトらしいですね。

シナリオの方ですが、それはもう丁寧丁寧丁寧に。「頼りがいのある引っ張ってくれるような男がいい」と言われた後にムラサメの手を引っ張ってみたり、内心疎外感を感じていたムラサメを、ムラサメが見えない仲間にも紹介してみたり。いろいろあったので一行では書きにくいですが、細やかな誠意を感じる良いテキストでした。

ちなみに、

常陸茉子

散々他人(将臣)の恋愛を煽ってきたキャラだったので、自分自身(茉子)はどうなのか……とプレイ中は気になっていました。『サノバウィッチ』の戸隠憧子先輩、『RIDDLE JOKER』の式部茉優先輩など、ゆずソフトは、その手の耳年増枠を毎回用意してくれている印象です (芦花姉も似たようなものだが省略)。

そもそも茉子は、『千恋*万花』の薄い本筆頭に上がるだろうぐらい、えっちな要素が強く、『#茉子とえっち』というハッシュタグがTwitterトレンドに登場して大騒ぎになるほどでした。あまりの反響に、ゆずソフト公式も、次作『RIDDLE JOKER』のカウントダウン動画にて、この事故をネタにするほど。

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突如トレンド1位に現れた「#茉子とえっち」とは一体?真相はゆずソフトのエロゲ最新作だった | HENTAIまとめ

Twitterトレンドで完全勝利した常陸茉子UC - ニコニコ動画

しかし蓋を開けてみると、少女漫画が好きな、恋に恋する乙女枠でした。こちらのパターンもゆずソフトでは恒例ですね(因幡めぐる、二条院羽月など)。こういったパターンにおいて、登場するのがなぜか「少女漫画」で「ラブコメ」じゃないのはいったいなぜなのだろうか。

ただ、彼女の本質はそこではなく、自分自身に自信がない感覚……いわば劣等感との葛藤が、印象深く感じました。それこそ、朝武家に仕える機械、と自重するほどには。ツイートはしていませんが、Another Viewに「ワタシは、生きたい……人間になって……ちゃんと生きたい」という台詞まであるのは衝撃的でした。

その原因としては幾つかあるのですが、「実は常陸家が村八分にされているのでは?」については明確にNOと突きつけられたのは良い展開でした。言い換えると、前述した「ゆずソフト特有の手心」です。

そうした自信のなさを解決するため……もとい、常陸家に掛けられた呪いを解決するため、恋人のフリをする展開は強い……あまりにも強い。他のヒロインのルートでも書きましたが、キャラクターの可愛さ、もとい扱いの良さは、安心と信頼の品質なんだよな。

褒め殺しを受けて身代わりの術を使ってみるなどのギャグ展開こそあれ、

交際を始める前も始めた後も、ちゃんとイチャイチャが味わえて楽しかったです。

また、「他のルートを知っていると余計に楽しめる」要素が多分に多く、特にレナ√を先に経由していると刺さる描写が多かったな、と。あれだけ卑屈だった茉子が、他人(獣)の卑屈にも向き合えるようになるなんて……!

そういった点で、何より読後感がとても良かったシナリオでした。


(ここで獣にバカップルをツッコまれるのは草しか生えないのよ)

朝武芳乃

ラストミステリー、不思議発見。

……いよいよもって最後だな、とプレイ開始時は感じていました。展開はまぁ、呪いがぶり返してきたのに対処するんだろうな、と予想していました。レナ√や茉子√で見ましたからね、「獣」。分家である常陸家にも影響を振りまいていたほど、朝武家でも当然出張ってくるはずです。

その予想に違わず、登場した「獣」。言われてみれば確かにそうよな、あの犬耳が「誰の目にも見えるようになる」ということは、穢れを落とす作用がある温泉に入っても解決できない何か(=獣から飛んでくる呪い)があるということだもんな。

そしてそれを解決するために、獣と対峙する主人公達。穢れ、そして呪いと戦う手段が√毎に異なっていて、読み応えあるな……と感じました。もっとも、サブヒロイン√だと獣とは戦わないので、最終的に芳乃がどうなってしまうか分からないのですが……。

そして呪いも無事に解決し、エンディング。呪いが解けたので(呪いが露見しなくなるので)穂織の外に出ることができた芳乃、今まで朝武家で産まれなかった男児の誕生……。エモいシーンが叩き込まれて、私も画面の前でマジ泣きしそうでした。


キャラ面で行くと、クソ真面目で頑固……そして自分に負い目を感じていた少女が、

主人公に本心を打ち明けられるほどに打ち解け、

そして結ばれる……といった王道展開。鍋の〆の雑炊のように、胸に染み渡るなぁ……。

でも芋けんぴはやめようね?


ちなみに玉子焼きを作るシーンについて、担当声優の遥そらさんと、SD絵を描いたこもわた遙華さんからそれぞれコメントがありました。OP直前という印象深いタイミングで、平和に玉子焼きを作るだけでなく戦争に至ったのは、まさかこもわた遙華さんの関与があったからだとは。

まとめ

どの√も光る……どころか輝くものがあり、甲乙付けがたい。前にも書きましたが、『サノバウィッチ』に並ぶ傑作ゲームでしょう、これは。

おまけ

本作のアイキャッチは、共通ルートで2種類、個別ルートで各2種類づつあります。後者はヒロインが6人で12枚、それぞれが干支に対応しており、2枚あるうちの片側は必ず「恋愛成就」です。こういった法則性を見つけていくのも楽しいもの。

それと、ゆずソフトの場合、CHAPTER表記が立ち絵より奥側に来るようです。こちらも新たな発見でした。

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