光るところはあった同人エロゲー。『制服天使』をクリアして感じた詳細な感想。

概要

購入してはいたものの、なんだかんだでプレイできていなかったゲームの感想記事です。
ゲーム開始は2022/1/25、ゲーム完走は2022/3/8でした。

「続編が出なかった」という事実

この作品は、公式サイトの記述を見てもわかるように、連作を意識して組まれていました。そのため、詩音以外の……あやねなどとのルートも、二作目以降で描かれる予定でした。

ところが、公式サイトのラインナップを見ても分かるように、二作目以降はリリースされませんでした。公式同人誌により他ヒロインとのHシーンが少しだけ描かれたり、バッドエンド側を延長する追加エピソードが出ていたりはしますが、本格的な「二作目」が出ていないのは致命的と言えるでしょう。

それどころか、当該ブランドは、2015年以降は新作をリリースしていません。つまり、活動休止ないし廃止になっていると考えるのが自然です。なぜ続編が描かれなかったのかは不明ですが、資金か人材かモチベが尽きたのでしょう、きっと。この「未完である」ということが、当作がまず直面する欠点と言えます。

学校の友達とのエピソードが不足

上記の事情により、この作品は単品で評価せざるを得ません。しかし、連作を意識した都合からか、どうしても描写不足な面が目立ちます。

例えば、学校の友達とのエピソード。詩音に起きた事情により、故郷を離れねばならない主人公として、短いながらも濃密なシナリオ展開がほしいところです。
しかし、作品を俯瞰した限りでは、過去に起こした騒動・空き地でダベった思い出ぐらいしかない印象です。これにより、過去のバックボーンが重要な「幼馴染み属性」を持つあやねが、その幼馴染としてのヒロイン力を発揮しづらくなっています。
終盤における「あやねの守護天使としての覚醒」も含め、恐らくはあやねルートで描かれる予定だったのだと思いますが、前述した通り、二作目以降が出なかったことから、死に設定となってしまいました。

また、主人公は自転車趣味で、地方にも幾つか知人がいるとのこと。あまり聞かない設定であり、話を膨らませやすいと思われますが、今作においては、各地を転々とする逃避行以外に、その設定を生かすことができませんでした。仮に逃避行を続けるにしても、旅行など別のシナリオ展開に生かすにしても、関西や九州など、日本各地の話が出てきてほしかったところです。

連作を阻みそうなセックスの展開

では、単体の……詩音ルートとしての内容はどうでしょうか。当初、この作品が1ルートしか含まれていないとは思わなかったので、途中の分岐から詩音ルートとほのかルートに分岐するのかと思いきや、大きな肩透かしを食らってしまいました。詩音ルートの根幹をなす「詩音を守るための逃避行」。その部分については、概ね良く描けていたかと思います。

ただ、描写の都合から、仙台に住む知人である、ほのか さんとの3Pシーンも存在します。純愛物で3Pが描かれることは少なく、付いたとしてもAppendエピソードに入っている程度なのは、それだけ需要が少ない(と言うより地雷に触れかねない)ためです。が、この3Pシーンは回避できず、主人公はほのか さんとも一夜限りの関係を持つことになります。しかも、ほのか さんも処女……。

ここで注意したいのは、かりにもし、続編でほのかルートが描写されるとしたら、この仙台で結ばれるか、東京の大学に進学したほのかさんと結ばれることになるだろうということです。その時に、前述のような”不純物”が含まれていると”すっきりしない”、というユーザーはいるのではないでしょうか。このあたりは、どのようなシナリオ展開を今後検討していたかが、私にはよく分かりませんでした。

明かされぬ伏線があまりに惜しい

この作品には、前述した「あやねの守護天使としての覚醒」や、「あの大天使と蛭田との関係」など、幾つか回収されていない伏線があります。通常、そうした伏線は、続編で回収されるものです。逆に、単作ロープライスとして出すのなら、そういった展開はカットすることもできました。しかし、現実はどちらでもなかったため、それらの伏線が、シナリオにとって単なるノイズとなってしまいました。

バッドエンドがあまり面白くない

率直に言って面白くない。

いや、お金持ちに買い上げられるまではいいのですよ。選択肢を誤った結果のバッドエンドですし、「天使が買われてオモチャにされることがある」といった説明は、蛭田からされていましたから。「ドナドナされてオークションで買われて犯される」とかあまりにベタすぎる展開ですが、どうせバッドエンドなので雑でも問題ないと言えば問題ない。

ただ、「会場でいきなり犯された」後に、わざわざ「和室を用意して着物を着せてから犯し」、「洋風な拷問道具がある地下牢で輪姦される (輪姦の様子はビデオ撮影)」というのは、シチュエーションがあまりにもとっちらかっているんですよね。これが例えば、「買われてから地下牢で散々オモチャで遊ばれた後に (買った金持ちに) 犯されても心がブレなかった」とかなら、買った奴の嗜好に一貫性があるし、話が冗長じゃないのですっきりしていたと思うのですよ。前述の流れだと、展開があまりに長すぎて、大天使の介入が遅すぎるように感じてしまう。

まとめ

「連作の第一作」として作られた都合で起きた不具合と、単に仕上がりが荒削りだったことによって起きた不具合が、両方合わさって起きた悲劇だと感じました。とりあえず ほのか さんルートは寄こせ。

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