概要
『夜明け前より瑠璃色な コンプリートパック』が発売されたことにより、『けよりな』3部作を手にすることになった私。
実はけよりな初体験です!!!楽しみ!!!https://t.co/x46nVFDvFU #夜明け前より瑠璃色な祝発売 pic.twitter.com/DRmMCRfY8c
— YSR@千恋*万花を攻略中 (@YSRKEN) September 28, 2020
そこからしばらく経ち、ようやく、3部作全てを完走することができました。3つ合わせて のべ129日の出来事でした……。
『夜明け前より瑠璃色な』をインストール開始します。 pic.twitter.com/8RX8LDuBLM
— YSR@千恋*万花を攻略中 (@YSRKEN) April 19, 2021
瑠璃色に始まり、瑠璃色に終わる物語。
— YSR@千恋*万花を攻略中 (@YSRKEN) May 30, 2022
『夜明け前より瑠璃色な』三部作、これにて完走しました。
完走した感想ですが……ごめん、言いたいことが上手くまとまらないわ。後日ブログ記事にしたためます。それでも一言だけ。オーガストの代表作である、この作品を完走できて本当に良かった。 pic.twitter.com/biJ6ASEsI6
作品をクリアして直後は、感想記事を書くこともままなりませんでした。
が、ある程度気分が落ち着いたので、こうして記事にしたためることにします。なお、記事を書こうと思ったきっかけは、この方のこのツイートを見かけたことでした。
けよりな感想戦、全員が「フィーナ王女は殿堂入りなので一回置いて良い??」と「そこで残れるシンシアならMarginalityは流れてないんだよ」って言ってたの草なんだよな(基本的に感想は個人差があって被らない物だと思っているので)
— るてん@C100日曜日東S08b (@Ruten_EdWS) June 18, 2022
リース√の衝撃
この作品群をプレイし始めて最初に驚いたのは、「リース√」の存在でした。
……いや、もちろんTrue√でも驚きましたよ。作品にまつわる真実、満弦ヶ崎市……もとい、満弦ヶ崎中央連絡港市の所以については。
しかし、私は過去に『大図書館の羊飼い』『穢翼のユースティア』『FORTUNE ARTERIAL』をプレイしてきた人間。True√で全てをひっくり返すような真実が明らかになるのは、オーガストのお家芸だと分かっています。それだけに、『夜明け前より瑠璃色な』でも同様であり、それ以外の個別√はヒロインとイチャイチャするためにある……大げさに言ってしまえばそれぐらいの心構えでした。
ところが、リース√、もといフィアッカ√での展開は違いました。そりゃエロゲーですものセックスはします (※CS版だとキスすらしてない)、しかし私は恋人になれないので俗世から退場します、といった展開なんか見たら「マジで?」と唸りますよ、そりゃ。
『無印』クリア時の感想では、リース√およびTrue√で畳みかけられるストーリーに圧倒された感ある感想で、「そもそもリースはヒロインなの?」といったことに意識が向いていませんでした。『CS版』クリア時の感想でも同様。我ながら、なんと雑な「プレイヤー」なのでしょうか、私は……。
シンシア√の衝撃
リース√に続き、更に私が驚かされたのは、「シンシア√」の内容でした。
「他ヒロインとの√、平行世界に残したデバイス (空間跳躍技術の名残) を回収しきる」というミッションのため、悠久の時をターミナルで過ごす少女、シンシア。彼女と主人公が素で出会ってしまい、最後のデバイスを回収するための奇妙な同棲生活が始まりました。そして最終的には、姉であるフィアッカ (in リース) との邂逅を果たします。
それだけでも衝撃的なのですが、その展開をゲームのUIと融合させた点についても、印象が強い√でした。何気なくクリックしていた、ミア・麻衣・菜月・さやか・リース・翠・エステル√のAfterを読むための「ボタン」。それが スーッと目の前で操作される という、あまりにメタな展開に、私は目が離せませんでした。
また、リース (フィアッカ) と同じかそれ以上に、使命と恋愛、相反する2者の間で苦悩するヒロイン (と主人公) の姿が描かれます。しかし、「よくある恋愛物だと結ばれるだろうが今回は違う」と言わんばかりに、シンシアと主人公は、使命の方を選択したのでした。
ヒロインを偽史にしない物語
そうした作品の「設計」を俯瞰して見ると、平行世界の存在を明示した、シンシア√の特異性がよく分かります。
『夜明け前より瑠璃色な』は、1周目にフィーナ√を強制し、『無印』でも『MC』でも、True√の枠はフィーナ編でした。それだけフィーナが尊重されている……と言うよりかは、「地球人と月人の姫が結ばれ、両国間の緊張状態が緩和される」ことが 「正史」 であり、決定事項であるかのような印象を受けます。最終的にTrue√に誘導していく設計は他作品でも変わりませんが、その傾向が特に強いのが『夜明け前より瑠璃色な』シリーズだったわけです。
しかしシンシア√により、それ以外の平行世界もキチンと存在し、そのことを確かに覚えている者 (シンシア) もいる、ということが明らかになりました。フィーナ√以外のヒロインを主人公が選択も、 「偽史」ではなく確かに存在する のです。そんなの当然だろ、とメタ的な位置にいるプレイヤーは判断できますが、作中の主人公にそれを判断する術は通常ありません。それこそ、『大図書館の羊飼い』における小太刀凪のように、それを説明してくれる者がいなければ。
この設計をプレイヤー目線で見ると、「フィーナ√は正史ですが、それ以外も偽史ではなく事実ですよ、安心してください」といった想いが込められているのではないかと、ついつい想像してしまいます。オーガストの他作品にしても、「主人公が他の選択肢を選んだら?」といった話題について、強く意識させてくれるような作りな気がするのは、私が買いかぶりすぎなのでしょうか?
神と人間との物語
そして、その関係……各ヒロインの√がそれぞれ「正史」であることを肯定するためには、フィアッカ√およびシンシア√の存在が必要になります。彼女達の……マーグリット姉妹の√は共通して、「世界の裏側」を知ること、一夜限りの「契り」を結ぶこと、そしてヒロインが各々の「役割」に帰還することが挙げられます。目的に殉じた気高き少女、と呼べばカッコいいですが、シナリオの裏方で回る歯車にすぎない、とも言えるでしょう。あまりに発想がメタなため、他のヒロインと同じ尺度で考えられないのが彼女達なのです。
ここで、「世界の裏側」「契り」「役割」は、作中の主人公と、ゲームをプレイするプレイヤーのそれぞれに向けられたものだと考えられます。つまり、「『作中世界の仕組み』と『ゲームシステム』」「『セックス』と『エロゲー的なお約束』」「『世界を守るために戦う存在』と『そのために攻略できない歯車であること』」……その二面構造が、『夜明け前より瑠璃色な』シリーズには内包されているのです。
古来より、神と人間とが出会うと物語が始まる「もの」です。これは、「超常的な存在と出会って何も起きないはずがなく」といった物理的な意味合いと、「何か起きることで神話として記録された」といったメタ的な意味合いがあります。
それを踏まえてマーグリット姉妹を見ると、2人とも実に「神」に相応しい振る舞いじゃないですか。フィアッカは「伝説の存在」扱いですし、シンシアに至っては「存在すら認知されていなかった」のです。その立場からそれぞれの視点で世界を見守っていたということも、彼女らの神性に拍車を掛けています。
神話の世界だと、神と人間がウコチャヌプコロして子を成すことも珍しくありません。が、『けよりな』は現実的な世界観だけあり、彼女らは子を作りませんでした。しかし、彼女らと奇妙な縁ができた主人公は、年を取ってから、もしくは子孫の代で、彼女らと再会を果たします――!
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そのとき、私は、そこにいる。私の好きな言葉です。
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